何度もお店に来たことのある方は、もう知っていると思いますが、食事と一緒に出される止め椀は、デザインから漆を塗るまでの工程を、お店で手掛けました。
お客様の中には、「お椀って作れるんですか?」とびっくりされる方もいますが、もちろん作れます。
と偉そうに言ってますが、口を出しただけで、飛騨高山に住む友人とうちの出来る嫁が作りました。ちなみに口を出すことをデザインと自分は言ってまして、こんな流れです。
デザイン 島田 歩(店主)
木地製作 のんちゃん(友人)
漆 島田 由美江(店主の妻)
たまにプロデュースと言ってみたりします。
直径が広く、浅めで、持った時に手に馴染むような丸みがあり、ほんわかするようなイメージだったのですが、そのイメージ通りになったので、のんちゃんとうちの出来る嫁は凄いなあと思います。
お椀内部の底には、お店からのメッセージを書きました。お味噌汁を飲みほすと現れます。余談ですが、お味噌汁の味噌も自家製です。
まずは簡単に木地の説明ですが、木は縦木で木取りされたものを使います。縦木とは木を輪切りにし、断面に器の口径を書き、切り出していきます。ねじれ等が少ないのでお椀に適してると言われています。
こんな感じ↓
結構分かりやすい絵だと思うのですがどうでしょう。iPadでこんな絵が描けるんですね。
気をとりなおしてどうぞ。
飛騨高山で木工職人をやっている友人が、木地を調達しに行く時に、メールで「週末に山中まで木地を取りに行ってきます。」みたいな内容のメールが来まして、最初は山の中に入って取ってくるのかと思ってしまいました。山中塗りでも有名な石川県の山中を言ってたみたいです。
右が山中から仕入れたばかりの状態。左が最初にロクロでひいた状態。燻煙乾燥されているので右側の方は色が濃いですね。
自分もよく知らなかったのですが、山中では、完全分業制になっていて、木地師の前に、生の木から縦木や横木で木の塊をとり、荒削りして、燻煙による乾燥をする業者さんがいるんだそうです。乾燥する期間はおよそ半年ほどで、これにより、お椀にした後に木の狂いが出にくくなります。
下の写真が友人のんちゃんが、栃の木という木をひいているところです。
木地をろくろで回転させ、ノミを当てると、だんだんとお椀らしい形になっていきます。
まだフチが厚いですが、だんだんとお椀の形になっていきます。
高台をなめらかにしています。美しいですね。
写真のものに漆を塗っていきます。ここからはうちの出来る嫁の出番です。
飛騨高山から届いたばかりの状態。
木地全体にヤスリをかけて、肌を滑らかにします。フチの部分は口をつけた時に優しい感触になるよう、丸みをつけました。
いよいよ漆塗りの始まりです。まずは、木地に漆を吸い込ませます。
少し希釈した生漆を塗ると、木が漆を吸い込んですぐに乾いた状態になります。吸わなくなるまでたっぷりと塗って、最後に拭き取ります。
生漆(きうるし)とは、漆の木から採ったそのままの樹液です。
漆を吸い込んで、木目がはっきりでて来ました。
数日間、湿り気があって温かい場所で乾かします。「乾かす」と言っても、水分を飛ばす乾燥ではなく、湿度と温度のある場所で漆を硬化させるという化学反応?です。
乾いたら生漆をすり込みます。
これを2回ほど繰り返しました。
仕上げは、古代朱と言われる渋めの赤にするつもりですが、まずは下地として呂色という黒い漆を塗っていきます。
塗る・乾かす、磨くを3回ほど繰り返し、漆の層を作りました。
漆を何度も塗り重ねることによって耐久性などが増します。
いよいよ色をつけます。
「木地呂」という漆に朱色の顔料を混ぜて赤色を作ります。
漆と顔料がしっかり混ざるように、専用の道具を使って練るようにして混ぜます。
漆を和紙で濾して、漆に混ざっているホコリをとりのぞいてるところです。
赤い漆を3回塗り重ねました。こちらも塗る、乾かす、磨くを3回です。写真は下地にすでに色が付いているので、2回目の塗りです。
今回は、乾かす時に湿度を低めにしてゆっくりと硬化させます。こうすることで、発色がマッドな感じになります。
好きな色に仕上がりました。
最後にお椀の中に漆の白色でお店からのメッセージを書きました。
自分たちで作るからこそ出来る和食島田洋服店ならではの器となっています。
島田 歩
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